【2025年最新】退職率の計算方法とは?自動診断ツールと業界別平均データで人事の次の一手をサポート

村上

退職率が高いと悩む企業は多いですが、まずは「正確な計算」と「客観的な比較」が重要です。この記事で、国の基準に沿った正しい計算方法と、業界平均のデータを活用する術を身につけていきましょう。

退職率と離職率、実は違う?まずは言葉の定義を正確に理解しよう

西野

クライアントから「退職率と離職率、どちらの数値で報告すべきですか?」と聞かれることが多いです。この二つの言葉の違いを、社内のメンバーに説明できるようにしておくことが重要であると考えています。

経営層への報告などで「退職率」や「離職率」という言葉を使う際、その違いを正確に説明できますか?

この二つの言葉は混同されがちですが、実は示す範囲や使われる文脈が異なります。

計算方法の話に入る前に、まずはこれらの言葉の定義をはっきりさせておきましょう。

正確な言葉の理解が、信頼性の高い報告への第一歩です。

「退職率」が示す指標とは

「退職率」とは、一般的に、ある一定期間内にどれだけの従業員が退職したかを示す指標として使われます。

ただし、この「退職率」には法律などで定められた明確な定義はありません。

そのため、企業が独自のルール(例えば、自己都合退職者のみを対象とするなど)に基づいて算出している場合もあります。

社内の定点観測として、特定の傾向を追う際に便利な指標と言えます。

「離職率」が示す指標とは

一方、「離職率」は、厚生労働省が毎年実施する「雇用動向調査」で用いられている公的な指標です。

こちらは「常用労働者数に対する離職者数の割合」と定義されており、自己都合か会社都合かを問わず、すべての離職者が計算に含まれます。

そのため、他社や業界平均といった外部のデータと比較する際には、この「離職率」の定義を用いるのが一般的です。

どちらを使うべき?シーン別の使い分けを解説

では、実際の業務ではどちらの言葉を使えば良いのでしょうか。

基本的には、公的なデータとの比較や、客観的な数値を報告する際には「離職率」を用いるのが最も適切です。

一方で、社内での分析のために特定の退職理由に絞って傾向を見たい場合は「退職率」という言葉を使うことも考えられます。

それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

項目 離職率 退職率
定義の厳密さ 公的な定義あり(厚生労働省) 厳密な定義はなく、企業独自
主な利用シーン 業界平均や他社との比較、公的な報告 社内での定点観測、特定の傾向分析
計算対象 全ての離職者(自己都合・会社都合問わず) 企業によって異なる場合がある

このように、誰に対して、何を目的として報告するのかによって使い分けることが重要です。

経営層への報告や客観的なデータを示す場面では、厚生労働省の基準に則った「離職率」で計算・報告することをおすすめします。

【厚生労働省の基準】正しい退職率の計算方法を3ステップで解説

村上

色々あって混乱しますよね。でも、まずはこの国の基準となる計算方法をマスターしましょう。この「離職率」の計算は、外部比較の信頼性の礎となるので、正確な手順を理解することが不可欠だ。

ここでは、最も信頼性が高く、外部データとの比較にも使える厚生労働省の「雇用動向調査」で用いられている計算方法を、3つのステップで分かりやすく解説します。

この手順に沿えば、誰でも正確な数値を算出できます。

Step1. 計算に必要な3つの数字を用意する

まず、計算を始める前に、以下の3つの数字を準備する必要があります。

お手元の人事データから正確な数値を集計してください。

  1. 期間
    いつからいつまでの離職率を計算するかを決めます。(例:1月1日から12月31日まで)
  2. 期間中の離職者数
    ①で定めた期間内に離職した常用労働者の総数です。
  3. 起算日の従業員数
    ①で定めた期間の開始日(例:1月1日)時点での常用労働者数です。

ここで言う「常用労働者」とは、期間の定めのない労働者や、1か月を超える期間を定めて雇用されている労働者を指します。

Step2. 基本の計算式に当てはめる

必要な数字が揃ったら、いよいよ計算です。厚生労働省が用いている計算式は以下の通りです。

この式に、Step1で用意した数字を当てはめてください。

離職率の計算式

離職率(%) = 期間中の離職者数 ÷ 期間の開始日時点での常用労働者数 × 100

例えば、1月1日時点の従業員数が100名で、その年の12月31日までに10名が離職した場合、計算式は「10 ÷ 100 × 100」となり、その年の離職率は「10%」となります。

このシンプルな式で、客観的な指標を算出することができます。

正確な数値を出すために、計算時には以下の点に注意してください。

実務で間違いやすいポイントなので、しっかり確認しておきましょう。

計算時の3つのポイント
  1. 毎年、集計期間を統一する
    昨年は暦年(1月〜12月)、今年は年度(4月〜3月)で計算すると、正確な比較ができません。必ず毎年同じ期間で集計しましょう。
  2. 常用労働者の範囲を明確にする
    パートやアルバイトを計算に含めるかなど、自社における「常用労働者」の範囲を明確に定義し、一貫したルールで集計することが重要です。
  3. 期中の入社・退職者を母数に含めない
    計算式の母数となるのは、あくまで「期間の開始日」時点での在籍者数です。期間の途中で入社した社員は、次回の集計期間の母数に含めます。

これらの注意点を守ることで、データの信頼性が高まり、経年での変化を正しく追跡できるようになります。

計算結果をどう見る?日本の退職率の平均値【2025年最新データ】

西野

自社の離職率が算出できても、その数値が高いのか低いのか判断に迷ってしまいます…。客観的な評価を下すためには、厚生労働省の平均データと比較することが必須ですね。

自社の退職率を算出したら、次に行うべきは社会一般の数値と比較し、客観的な評価を下すことです。

ここでは、厚生労働省が発表している最新の「雇用動向調査」の結果をもとに、日本の離職率の平均値を見ていきましょう。

これらのデータは、経営層への報告書にそのまま引用できる信頼性の高い情報です。

全体の平均離職率の推移

まず、日本全体の離職率が近年どのように推移しているかを見てみましょう。

以下のグラフは、過去5年間の一般労働者の離職率の推移を示したものです。

引用:令和5年雇用動向調査結果の概要

グラフを見るとわかるように、近年の離職率は〇〇%前後で推移しており、経済状況や社会情勢によって微増・微減を繰り返しています。

自社の数値がこの推移と大きくかけ離れていないか、一つの目安として確認してみてください。

もし平均より高い場合は?退職率が高まる5つの主な原因

村上

平均より高いという事実は、決して悲観すべきことではありません。それは組織の改善点が明確になったということ。重要なのは、曖昧な感情論ではなく、具体的な原因を特定することです。

診断ツールや平均データとの比較の結果、もし自社の退職率が平均よりも高いと分かっても、悲観する必要はありません。

それは組織が成長するための改善点が見つかったということです。

原因を特定することが、効果的な対策への第一歩です。

ここでは、退職率が高まる主な5つの原因について解説します。

退職率が高まる5つの主な原因
  • 原因1. 人間関係の問題
  • 原因2. 働き方(労働時間・環境)の問題
  • 原因3. 人事評価・賃金への不満
  • 原因4. キャリアパスの不透明性
  • 原因5. 企業文化・風土とのミスマッチ

原因1. 人間関係の問題

職場の人間関係は、従業員のエンゲージメントに最も大きな影響を与える要素の一つです。

具体的には、上司のマネジメント不足による部下とのコミュニケーション不全や、部署間の連携不足からくる過度なストレスなどが、退職の引き金となるケースが多く見られます。

原因2. 働き方(労働時間・環境)の問題

長時間労働の常態化や、休日出勤の多さ、テレワークなどの柔軟な働き方に対応できていないといった問題も、特に若手社員の離職に繋がりやすい原因です。

ワークライフバランスを重視する価値観が広まる中で、時代に合った労働環境の整備は不可欠と言えます。

原因3. 人事評価・賃金への不満

自分の働きが正当に評価されていない、成果が給与に反映されない、という不満は、従業員のモチベーションを著しく低下させます。

評価基準が曖昧であったり、昇給・昇格のキャリアパスが見えなかったりすると、より良い条件を求めて転職を考えるきっかけとなります。

原因4. キャリアパスの不透明性

「この会社にいても、自分が望むようなスキルアップやキャリアアップは望めないかもしれない」という将来への不安も、退職の大きな原因です。

特に、専門性を高めたい、新しい分野に挑戦したいという意欲の高い社員ほど、成長機会の有無をシビアに見ています。

原因5. 企業文化・風土とのミスマッチ

企業のビジョンや価値観と、従業員個人の価値観が合わないというミスマッチも、徐々に働く意欲を削いでいきます。

例えば、トップダウンの意思決定が強い組織に、ボトムアップでの提案を重視する人が入社した場合、窮屈さを感じてしまうかもしれません。

明日からできる!退職率を改善する具体的なアクションプラン3選

西野

原因が分かっても、次に何をすべきか、優先順位がつけにくい…。効果が実証されていて、かつ明日から着手できる具体的な施策を、経営層に提案できるようにまとめておきたいです。

原因の仮説が立てられたら、次はいよいよ具体的な対策の検討です。

しかし、一度に多くのことをやろうとすると、どれも中途半端になりがちです。

ここでは、多くの企業で効果が実証されており、明日からでも着手できる具体的なアクションプランを、取り組むべき優先度順に3つご紹介します。

経営層への提案にも、ぜひご活用ください。

優先度【高】:まずは現状把握から。従業員サーベイの実施

対策を考える上で最も重要なのは、勘や思い込みに頼らず、客観的なデータに基づいて意思決定をすることです。

そのため、最初に行うべきは、匿名の従業員サーベイ(意識調査)を実施し、社員が何に満足し、何に不満を感じているのかを正確に把握することです。

これが全ての改善活動の土台となります。

優先度【中】:コミュニケーションの質と量を改善する1on1ミーティング

人間関係の問題やキャリアへの不安を解消するためには、上司と部下の定期的なコミュニケーションが不可欠です。

月に1回、30分でも良いので、業務の進捗確認だけでなく、部下のキャリア観やコンディションについて対話する「1on1ミーティング」の場を設けましょう。

導入する際は、その目的を管理職と部下の双方にしっかり共有することが成功の鍵です。

村上

人を育てるのは、“育てよう”と思った瞬間から始まります。 1on1は部下を「育成しよう」という意識と、「傾聴」が重要。形式的な進捗確認に終わらせない工夫をしていきましょう。

優先度【低】:中長期的な魅力向上へ。キャリア支援制度の見直し

これは即効性のある対策ではありませんが、企業の持続的な成長のためには欠かせない取り組みです。

社員が社内で成長し続けられる道筋を示すことで、キャリアパスの不透明性を解消します。

具体的な施策としては、資格取得支援制度の拡充や、部署異動の希望が出せる社内公募制度、若手社員と先輩社員を結びつけるメンター制度などが考えられます。

まとめ:正確なデータ把握が、組織改善の第一歩

村上

人事施策は、感覚ではなくデータに基づいて行うべきです。まずは厚生労働省の基準に則った「離職率」を正しく算出し、自社の課題を客観的に可視化すること。これが、全ての組織改善のスタートラインとなります。

本記事では、退職率の正しい計算方法から、平均データとの比較、そして具体的な改善策までを解説してきました。

重要なのは、感覚的な議論に終始するのではなく、まず正確なデータを算出して自社の現状を客観的に把握することです。

それが、効果的な人事戦略を立案し、組織をより良い方向へ導くための、確かな第一歩となります。

この記事が、あなたの会社をより良くするためのきっかけとなれば幸いです。

まずは、本記事でご紹介した診断ツールを使って、自社の退職率を計算するところから始めてみましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です